中京大学 教養講座

法律に「正解」はない。

 かつて民法では、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1とされていました。しかし、親の事情で子供の権利が制限されるなんて許されるのでしょうか。憲法にうたわれた法の下の平等に反するのではないかと、長らく議論されてきました。そして平成25年9月に、最高裁はこれを「違憲」とし、相続分を同等とするよう民法が改正されました。
 もっとも、最高裁はそれまで、この規定は法律婚を尊重するという合理的な理由をもっており、「合憲」であるとしていました。また現在でも、この法改正によって家族制度が崩壊し、結果的に傷つく子供が増えるのではないかと心配する人もいます。
 実は、法律に絶対的・恒久的な「正解」はありません。今ある法律は正しいと思われがちですが、それが違憲とされることもありますし、また法律を改正したからといって、問題がすべて解決するわけでもないのです。

法律上の婚姻関係にない男女間に生まれた子を非嫡出子と言う。ただし、この呼称を用いること自体に問題があるとする議論もある。

憲法に存在する「改正の限界」とは…

 家族にまつわる法律については、今年6月にも民法733条が改正されています。この規定で「180日」とされていた女性の再婚禁止期間について、昨年、最高裁が「100日を超える部分は違憲無効」との判決を下したからです。再婚禁止期間は、離婚後に生まれた子供の父親が誰かで紛争が起きないよう設けられたものですが、民法の別の規定(民法772条2項)によれば、離婚後100日置けば父親を推定できることになっています。違憲判決が下された背景には、これとの整合性を図るべきとの明確な理由がありました。しかし、それで話は終わりません。DNA鑑定が確立しているなかで再婚禁止期間を設けること自体が無意味であり、女性に対する差別に当たるとの意見もあります。結局、この法律も、「新たな正解」を見つける努力を続けていくほかありません。
 では、法律の判断基準となる「憲法」はどうでしょうか。法律と異なり、最高法規である憲法にはその判断基準となる規範がありません。しかし憲法には、決して変えることのできない「改正の限界」があると考えられています。例えば、人権規定をなくそうとすれば、それはもう憲法とは呼べず、憲法を掲げる意味を失ってしまいます。改正すべきか否か、何をどのように改正するかについて、やはり「正解」はありませんが、「改正の限界」に照らし、慎重に議論を積み重ねていかねばなりません。

思い切り悩みながら「答え」を探す。

 私たちは、今、時代のめまぐるしい変化の中で、さまざまな法の問題に直面しています。そこでは、異なる考え方や価値観が衝突し、簡単に結論を導き出せないこともあります。しかし、大切なのは議論し続けること。子供たちにどんな未来を手渡せるか、皆で悩みながら答えを探していくことなのです。
 このような姿勢は、国の憲法や法律のみならず、学校や職場のルールにも基本的には同じように当てはまります。現状の問題点を洗い出し、互いに守るべき原則を踏まえた上で、さまざまな意見に耳を傾けつつ議論を重ね、共に解決方法を探していく。法学部の学びから修得すべきは、こうした対話の姿勢であり、論理的に考える力であり、発想力であろうと思います。それは、あなたがいつか、社会のさまざまな課題に向き合う時に必ずや必要となるもの。ぜひ、法学部での熱い議論を通して身につけてください。

Profile

中京大学法学部 准教授 高田 倫子

大阪大学大学院法学研究科博士前期課程修了後、独ブツェリウス・ロースクールに留学(ドイツ学術交流会〈DAAD〉奨学生)。2013年大阪大学大学院法学研究科博士後期課程修了(法学博士)。日本学術振興会特別研究員(DC2、PD)、大阪大学大学院法学研究科助教を経て、2014年4月より中京大学法学部准教授に就任し、現在に至る。専門は憲法。

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