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お月見どろぼう再び現る!

「お月見どろぼうで〜す」と名乗りながら、子どもたちが近所の家を巡り、
玄関先に置かれた駄菓子をみんなで平等に分け合う。
新しく越してきた家の子どもも、古くからの家のお年寄りも
気軽に参加できる地域のイベントとして復活の兆しを見せる「お月見どろぼう」。
全国の町内会が減り続け、町の小さな祭りなども消えようとしている中で、
文学部歴史文化学科の小早川ゼミは、地域に眠る風習を掘り起こしながら、
新たな結び目となるものを探している。

名月に現れる小さな「どろぼう」を追いかけて…

調査に参加したのは小早川ゼミ所属の、総勢13名。かつて「お月見」は、中秋の名月の十五夜(旧暦8月15日)と、その1ヵ月後の十三夜(旧暦9月13日)に行われていたが、今では多くの地域が十五夜のみ。そのため現地調査は、2・3名ずつのグループに分かれ、愛知県内6ヵ所と三重県内の1ヵ所で一斉に行った。
2016年の十五夜は9月15日木曜日。現地で待ち構えた学生たちは、主役の子どもたちを追いかけながら行事の様子を写真に収めていく。また、それを見守る親御さんや地域の人たちに聞き取り調査しながら、いつ始まったのか、どれくらいの範囲で行っているのか、どんなルールがあるかなどの詳細な情報を収集。これを大学にもち帰り、グループごとに報告書にまとめていった。

消えていく民俗行事が、形を変えて現代に復活!

お月見どろぼうはもともと、農作物の稔りに感謝する収穫儀礼として行われてきた。月は種まきや収穫時期を教えてくれる神であり、子どもは神の使者と考えられていた。関東から九州まで広く行われていた一般的な風習だったが、戦後の都市化と農村の過疎化によって一旦は消えつつあった。ところが近年、多くの地域で復活の兆しを見せている。きっかけになったのもやはり“都市化”だった。
例えば、名古屋のベッドタウンとして県内でも有数の人口増加率を誇ってきた愛知県の日進市では、まずニュータウンに住む地元出身者が中心となり、自分たちが子ども時代に経験したお月見どろぼうを、現代に合わせた形で復活させた。これが古くからその地域に住む住民と、新しく引っ越してきた住民との対話の機会となり、恒例のイベントとなっていった。日進市も古民家を再生した施設でお月見どろぼうのモデルイベントを開催するなどして、お月見どろぼうを盛り上げている。また、日進市に隣接する名古屋市天白区梅が丘では、隣町のお月見どろぼうに地元の子どもたちが参加するのを見て、「わが町でも」と、住民有志によって自発的に始まった。

地元の人たちさえ気づかない伝統の価値を掘り起こす。

地域によって規模や運営主体、参加のルールもまちまちだ。インターホンを押し挨拶してから手渡ししてもらう所もあれば、昔ながらにそっと無言でもち去る地域もある。しかし、現代に共通するのは、儀礼的な意味合いは薄れ、地域の人々を結びつける“イベント”として受け入れられている点だ。都市化によって町内会の活動や地元の祭りが縮小傾向にある中で、地域で孤立しがちな子育てママやお年寄りたちは、伝統行事にルーツをもつ現代のお月見どろぼうに地域との結びつきを深めるという新たな価値を見出している。
お月見どろぼうのような民俗行事は全国各地に存在する。大切に守られているものもあれば、今にも消えそうなものもある。そんな地域の民俗行事や風習がいかに始まり、時代を超えて続けられてきたのか −−− 地元の人たちが気づいていない価値を現地調査によって掘り起こすことが小早川ゼミの研究目的だ。今後は、地域への情報提供を通して地域が守り続けてきた伝統の価値に気づいてもらい、それを活かした新たな町おこしや地域活性化を支援することにも挑戦しようとしている。

プロジェクトコーディネーター・メッセージ

歴史を学ぶ者の使命は、
歴史の価値を現代人に提示すること。

お月見どろぼうの調査は、「なぜ、いったん失われた伝統行事が現代に復活したのか」という疑問からスタートしました。調査に参加したのはゼミに配属されたばかりの学生たちが中心で、本格的なフィールドワーク(現地踏査)は初めての体験。自分の目で見て、現地の人たちの話を聴き、報告書にまとめるという一連の作業を繰り返す中で、歴史学や民俗学研究の基本的な手法を身につけてもらいました。
今年は、愛知県瀬戸市からの依頼で「警固祭り(けいごまつり)」の調査に参加することが決まっています。警固祭りは、豊作に感謝して社寺に馬を奉納する祭礼です。こうした「献馬」の行事も、昔は尾張一円で行われていましたが、今では多くが姿を消しています。瀬戸市には、奉納馬を警護する鉄砲隊や棒の手隊などが加わった警固祭りが今も各地に残されており、そこには何か合理的な理由があるはずです。また、大府市からは、地元の歴史民俗資料館の収蔵品の民具や写真を調査した上で、それを市民参加のイベント等に活用できないかと相談を受けています。
民俗行事や風習は、守り続けている地元がその価値に気づいていないことが多く、それを地域活性化に活かそうという発想にならない場合も多いと感じています。そんな地域に眠る伝統の価値を客観的、科学的に調査するのが大学の役割です。このゼミでは、自治体等に研究成果を提供することによって、新たなまちづくりにつなげてもらうことを目指しています。
歴史を学ぶ学生にも、歴史を学ぶだけでなく、その知識を活かすことにも挑戦してほしい。新しいものを創ろうとする時、それまでにあるものの価値を見直すことが大切です。特にまちづくりでは、多様な価値観をもつ人たちを結びつける必要があり、時代を超えて受け継がれてきたものの中にこそ、そのヒントがあるはずです。歴史の価値を現代の人たちに提示すること、それが歴史を学ぶ者の使命だと考えています。

文学部 : 小早川道子 准教授

お月見どろぼう

主に中秋の名月(十五夜:旧暦8月15日)に、子どもたちが「お月見どろぼうで〜す」などと名乗りながら、お月見のお供え物を近所の各家から貰い受ける行事。かつては、長い棒の先に釘や針金をつけ、軒先に置かれたお団子を突き刺したりして盗んだという。現在も全国各地で行われているが、地域ごとにやり方はさまざま。日進市などでは、地域の風習を伝承しようと、市民参加のお月見どろぼうイベントも開催している。

PROFILE

文学部
小早川道子准教授

1995年愛知大学文学部史学科日本史専修卒業。愛知県史編さん室勤務を経て2014年、中京大学に着任。2017年文学部准教授に就任する。専門は日本民俗学。主に愛知県下の年中行事に関わる民俗について調査・研究活動を展開。近年は子どもが関わる民俗行事に注目している。古老からの聞き取りなどフィールドワークを基にした従来の民俗学的手法と共に、文献資料を使った民俗研究も行っている。

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