実社会の企業・官公庁と連携する実践的な学びで
社会人基礎力を高める

いつか“親”になる日のために。

近年、少子化や核家族化を背景に、
自分が出産するまで赤ん坊とふれあう経験をもたない“親”が増えている。
そのことが「子育てママの不安」に拍車をかける。
このような現実を少しでも解決できないかと考え、中京大学心理学部小島康生教授は、
大学生に子育てを体験する実習「学生子育てサポーター」を9年間にわたり実施。
協力いただいたのは、
子育てしやすいまちづくりを目指す子育て支援グループ、「天白子ネット」。
両者が関係を深める中で実習はやがて、
子どもを挟んで親と学生が互いに学び合う場に発展していった。

大学生たちに、赤ちゃんとふれあう経験を。

「学生子育てサポーター」は、主に3年生を対象とした「発達心理学実習」の履修者。毎年、4月下旬に、参加する学生と、受け入れてくださる家庭の親子が集まって、顔合わせの会が開かれる。その後、学生はそれぞれの家庭へ。1日2時間ほど、月に1~2回、担当が決まった家庭を訪問し、お母さん、お父さんに見守られながら乳幼児の育児を体験していく。
ほとんどの学生にとって、乳幼児に関わるのは初めての体験だ。最初は、抱きかかえるだけでも緊張してしまう。それが伝わるのか、泣き出してしまう子も。呆然と立ち尽くす学生を見てお母さんが、こうしたらいい、ああしたらいいと声をかけてくれる。でも実は、若いお母さんも、子育ては新米。悪戦苦闘の末に身につけた子どものあやし方のコツや子育ての苦労話、子どもの可愛さを学生たちに伝えるのは楽しくもあり、自分の子育てを見直す機会にもなっているという。

子育て体験実習が心理学部生ならではの展開へ。

時には、保育園へのお迎えや買い物に同行することもある。お出掛けの時にはさらに緊張する。それでも、子どもとの距離が縮まったと感じる瞬間がある。そんな瞬間を積み重ね、実習を終えるころには、あやしたり、喜ばせたり、寝かしつけたりする自分なりのコツを掴み始める。そうした経過の中で、自分でも気づかないうちに、子どもの成長を楽しみにする心のゆとりも生まれてくる。
子育てサポーターが始まって2017年で9年目。当初は学生に子育てを経験させることが主たる目的だった。しかし、発達心理学に関心をもつ学生にとってこの実習の経験は、研究・調査のアイデアを得る機会にもなっている。実際これまでには、この実習への参加が学生にどのような意識の変化をもたらしたかを卒業論文のテーマにした学生がいるほか、訪問家庭の子どもの観察、お母さんへの聞き取り調査から、子育てにまつわるさまざまな問題を取り上げたグループも。こうした研究成果は、子育てしやすいまちづくりを目指す天白子ネットのホームページや情報紙も公開され、子育てママたちにもフィードバックされる。

子育てを地域で担う、新たな社会モデルに。

12月、実習最後のお別れの会(通称「お礼の会」)。約7ヵ月にわたって交流を重ねてきた学生と子どもたち、そしてお母さんたちがスタート時と同様、一堂に会する。そこには、スタート時のような緊張はない。学生とお母さんたちも打ち解け、それぞれに思い出話に花を咲かせる。
現在、この取り組みは、天白子ネットが目指すまちづくりに関連した取り組みにも位置づけられている。今後、少子化や女性の社会進出が進めば、「子育てを社会で行う」という流れは確実に加速していく。それには、地域の市民や高齢者、行政機関、民間団体などさまざまな参加者が必要だ。その輪の中に「大学生」が参加するこの取り組みは、子育てにやさしい新たな社会モデルの先駆けとして期待されている。

プロジェクトコーディネーター・メッセージ

子育てから家族や社会の現実を知り、
自分に何ができるか考える機会に。

都市化にともなう核家族化、そして少子化が、子育て時期の親子を孤立させています。誰にとっても子育ては初めてのことですが、都会では頼る人もいない。加えて、その親自身、赤ちゃんと関わる経験をほぼもたずに育ってきた場合には、さらに深刻な問題になりかねません。2000年くらいから中高生を中心に、赤ちゃんふれあい体験などの取り組みが全国で実施されるようになってきたのは、そうした事情があってのことです。この実習もその一環として企画したものですが、一日だけ保育所に行って子どもと遊ぶような単発的な取り組みでは物足りないと考え、天白子ネットの協力を得て、家族と密着した体験ができる仕組みにしました。
学生にとっては、子どもとふれあうことができるなどの直接的な効果もありますが、心理学部生ならではの視点で現実の家族、地域社会を見つめ、これから自分がどう行動すべきか考える機会にもなっています。実際、子育てサポーターを体験してから本当のママとなって子育てしている元学生からは、「実習の経験を踏まえて子どもがいる生活をイメージすることができたので、仕事を選ぶ際や出産、さらに子育てしながら働くということも計画的に行うことができた」といった感想をもらっています。
また、こうした直接的な効果以外にも学生たちは、家庭訪問する時の挨拶にはじまり、連絡やお礼のメール、世代の異なる人との会話などを通して、社会人として生きる上で大切な対話力を身につけてくれています。
一方、学生たちを受け入れてくださったご家庭からは、「少しリラックスして子育てできるようになった」などの声をいただいています。実習では、学生に任せっきりにはできませんし、手間が掛かる部分ももちろんあります。ご協力いただいたご家族は、小さな子どもとふれあう機会を次の世代を担う若者に提供したいというボランティア精神から参加されている方々がほとんどです。そんなご家族も活動の中で、学生という仲間が増えたことに価値を見出してくださっているようです。
子育てママも、つながりを求めています。最近は、子育てサークルや行政等の支援サービスも充実してきましたが、そこに集まるのは同じ子育てするお母さんたち。本当の意味で子育てを社会で担うためには、もっと多様な人たちが関わっていくべきです。中京大学の学生たちの参加が人と人の輪を広げるきっかけになればと願っています。

心理学部 : 小島康生 教授

天白子ネットとは

名古屋市天白区内の子育てサークルや個人、専門家らが集まり、地元の行政機関や社会福祉協議会、主任児童委員と連携し、子育てしやすいまちを目指して活動する市民のグループ。地域の子育て情報を集めた情報紙「PAKUっ子(月刊/3650発行)」をはじめ、子育てママが集う「ママカフェ」、社会福祉協議会等とのイベント「天白おやこ子育て広場」の開催など、「つたえる」「であう」「つながる」をテーマにした多彩な子育て支援活動を展開。

PROFILE

心理学部 小島康生教授

1997年大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了、博士(人間科学)。大阪大学人間科学部助手等を経て、2002年中京大学心理学部。2013年に同学部教授に就任、現在に至る。研究分野は発達心理学。「親が子どもに提供する発達環境と子どもの社会化」をテーマに、子育て開始期の親が子どもに提供するモノ・ひと・場の環境、および子育て開始期の親子の相互作用などを調査・研究。また、学生を対象に乳幼児とのふれあい体験実習を通して、発達心理学的見地から「親になること」をテーマにした研究も行っている。

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