プラズマ理工学を応用した宇宙工学研究
手作りの測定器で、
宇宙空間に潜む
プラズマの謎に挑む
PROFILE
工学部
電気電子工学科 4年
電気宇宙工学研究室
(村中研究室)
(岐阜県立長良高等学 出身)
林 祐月さん
研究室の先輩たちの活気に惹かれて。
この研究室を選択する決め手は、研究室訪問の際に感じた先輩たちの活気でした。見たことのない複雑な測定器を使って実験し、活発に議論し合っているのを見て、「面白そう」と思ったことがきっかけ。そこで村中先生から、何もないように見える宇宙空間にもさまざまな物質や現象が存在するというお話を伺い、「宇宙空間」という未知の世界に対する興味が掻き立てられました。
そのとき先輩たちが実験で使っていたのは、「宇宙プラズマ環境実験装置」というもの。真空状態にした空間にプラズマ粒子を飛ばし、模擬的に宇宙空間をつくりだす装置です。現在は私も、この装置を使ってプラズマの電位測定などの実験を行っています。
実験装置の小さな穴から宇宙の不思議を見る。
気体をさらに加熱すると、分子が電離してイオンと電子に分かれます。プラズマは、こうした電荷粒子が自由に動き回っている状態のこと。宇宙空間には、このプラズマ粒子が希薄に存在し、人工衛星にも影響を与えています。例えば、人工衛星に取り付けた太陽電池が帯電し、不具合を起こすこともあります。そのためこの研究室では、人工衛星に対するプラズマの影響や、その周辺で起こる現象を実験や数値シミュレーションによって解明し、宇宙機の安全性を高める研究を行っています。
現在はロケット技術の進歩もあって、人工衛星や宇宙開発は身近なものになっています。この研究室でも将来、実際に超小型衛星を打ち上げることを目標に、衛星通信基地局の拡充を図っています。
実験装置も実験計画も学生の手作り?
現在、私が取り組んでいるのは、「エミッシブプローブ」と呼ばれる測定器を使ったプラズマの電位測定です。エミッシブプローブは、測定精度を高めるために、測定器と空間の電位差を小さくするように工夫されています。ただ、プラズマの実験にぴったりの測定器が市販されていることは稀で、実験に使っている測定器の大半は、研究室の学生たちが手作りしたもの。そんな実験装置を一から作り上げるのも、この研究の魅力です。今どんな実験が必要で、何を測定すべきか、そのためにどんな方法があるのか……そんな議論や試作から工学の幅広い知識を得ることができます。
将来はものづくりに関わり、製品開発や設計の仕事を希望していますが、この研究室でさまざまな問題に取り組み、仲間と乗り越えてきた経験を活かしたいと思っています。
2017年1月取材
電気宇宙工学研究室
担当教員 :村中 崇信 准教授
プラズマ理工学と数値シミュレーションを応用し、電気工学の側面から宇宙開発に貢献することを目指し、1)人工衛星の電力供給の安全性と機体設計、2)宇宙探査機等に搭載するプラズマロケットについて研究。研究に必要な数値シミュレーションツールの開発も行っている。