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移民から教育と社会を考える
プロジェクト

国境を越える移動は、その人の人生にどんなインパクトを与えるのでしょうか。
また、国境を越えて移動する人々は、地域社会にどのような影響をもたらすのでしょうか。
「移民」の子どもや若者の経験を通して、教育や社会のあり方を考えます。

可視化されない移民の若者たち

グローバル化の波とともに、国境を越えて移動する人々の数が増加しています。その中には、複数の国や地域につながりを持ちながら生活することで、経済や教育などさまざまな面で不利な立場に置かれてしまう子どもや若者たちがいます。なぜ、移民が増えているのでしょうか。そして移民の子どもや若者たちはどのような困難に直面し、学校や地域はどのように支えていけばよいのでしょうか。

社会学専攻の芝野淳一ゼミでは、教育社会学の観点から「移民と教育」について学びます。中京大学豊田キャンパスのある豊田市は、自動車関連産業がさかんであることから南米をはじめ中国やフィリピン、ベトナムなど海外から多くの人々が就労などのために移住しています。しかし身近であるにも関わらず、私たちが移民の子どもや若者と接したり、彼らの生活を間近で見る機会は決して多くありません。

移民の人々と出会うフィールドツアー

プロジェクトでは2年次に教育社会学などの理論的知識を身につけつつ、移民の人々の生活を知るフィールドツアーを積極的に行います。これまで中京大学豊田キャンパスの近くにあるブラジル人学校「EAS豊田校」と定期的な交流を行い、高校生と一緒に授業を受けたり、サッカー大会を開催して親睦を深めてきました。またブラジル人をはじめ多くの移民が暮らす豊田市の保見団地で、放課後の学習支援ボランティアに参加しています。さらに、他の地域との比較を目的に、大阪や神戸といった歴史的に移民の多い場所にもフィールドワークにいきます。国を越えて移動する子どもや若者との交流を通して、学生は交流の楽しさを知り親近感を抱くとともに、彼らと日本社会との間にある絶対的な壁———経済や教育の格差、社会保障などの問題に気づくことができるでしょう。

3年次にはこれまでの学びや経験を踏まえ、「国境を越える移動」を経験する当事者や、そうした人々と関わりをもつ人を対象にインタビュー調査を行います。対象者は、保見団地で生まれ育った日系ブラジル人2世・3世や中京大学で学ぶ外国人留学生、海外留学を希望する日本人学生、移民の子どもの学習をサポートするボランティアの日本人など多岐に渡ります。一人ひとりの生活史をグループで聞き取り、移動の経験がその人の人生にどのような影響を与えたのかを、進路選択やアイデンティティ形成といった観点から分析します。そこから見えてくるのは、人々の移動をめぐる経験の多様性と、そうした人々が住む地域社会の重層性です。

「社会学的想像力」を実践する学びを

じつは日本社会において、移民は戦前から長い歴史を持っています。多くの人々が中国や朝鮮半島などから日本に移り住んでいるほか、南米をはじめとする諸外国に多くの日本人が移住しています。しかし学校教育では、そのような移民の歴史はほとんど取り上げられていません。人々の移動は今も昔も私たちの身近にあるにもかかわらず、学生たちはそうした事実を知らぬまま社会に出ていきます。このプロジェクトでの学びを通して、国境を越えて移動する人々の背景や現状を知り、これまでにない視点や新しい発見に出会うことが期待されます。

芝野先生は「このプロジェクトのねらいは、一人ひとりの経験と社会との結びつきを知り、社会を重層的に捉える“社会学的想像力”の実践にあります」と語ります。移民の子どもや若者の経験を通して社会学的想像力を鍛え、多様な背景をもつ人々が生きやすい教育や社会のあり方を考えていきます。


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