高大接続入試【法学的思考型】講評(法学部)2024年実施

筆記試験
国語の基礎学力を総合的に問うような筆記試験を課しました。志願者によって若干の差はあったものの、志願者全員が一定程度の国語の基礎学力を有していると判断できました。

 

※写真はイメージです

 

グループディスカッション

1.課題文について
本年度は、課題文として選択的夫婦別氏制度の是非を問う文章と、関連する法律の条文、資料を提示しました。課題文・資料から、以下の3点を正確に読み取った上で、議論ができているかを問うています。

 

 ① 選択的夫婦別姓制度それ自体の内容・趣旨
 ② 選択的夫婦別姓制度と法律との関係
 ③ 賛成意見と反対意見の内容・趣旨

 

まず、選択的夫婦別氏制度それ自体の内容・趣旨を正確に理解したうえで自身の見解を論じているかが大前提となります。
次に、課題文と共にいくつかの資料を提示しており、それらの内容も論拠としつつ、自身が選択的夫婦別氏制度に賛成であるのか反対であるのかにつき多角的に論ずることを重視しました。法学部への入学試験であるため、とりわけ選択的夫婦別氏制度につき法律との関係について言及、あるいは論拠としているかを重視しました。
さらに、グループディスカッションにおいて、志願者自身の見解と異なる意見をその内容も十分に理解しているかも重要です。

 

2.グループディスカッションにおける評価ポイントについて

 

論理性、説得力 グループディスカッションのテーマである「選択的夫婦別氏制度に賛成か、反対か」について論ずるためには「選択的夫婦別氏制度それ自体の内容・趣旨」を理解したうえで、「なぜ選択的夫婦別氏制度について賛成であるのか、反対であるのか」につき主観的にではなく、論理的に、説得的に論ずる必要があるところ、志願者は比較的適切に論じているように見受けられました。例えば、選択的夫婦別氏制度について、憲法13条の幸福追求権、第14条の法の下の平等といった観点から賛成であるといった見解、家族の一体感を維持するためには夫婦同氏が重要であるため反対であるなどの意見が比較的多くみられました。
このようにグループディスカッションでは、課題文の趣旨を踏まえた上で、説得力ある議論をするようにしてください。また、グループディスカッションにおいて「筋道を立てて物事を考えた上で、他人を説得できるような理由づけを伴って、発言する」ことが基本中の基本であることを、意識してください。
視野の広さ、傾聴力、整理・集約力 良い意見が出たときに、それに続いてそれに絡めた意見を述べる場面が見られ、高く評価することができます。しかし、志願者によっては他の志願者の意見を十分に踏まえず自身の意見を述べ、せっかくの議論が広がらない場面も見られました。他の志願者の意見を十分に踏まえた上で、それに関連する意見を述べ、議論を深めるようにしましょう。また、他の志願者の意見及びその趣旨を正確に要約がなされていないと思われる場面も見られました。他の志願者が丁寧な言葉づかいで間違いを正す発言をすることはプラス評価につながります。
特に司会者は、他の志願者の発言を正確に理解し、論点を的確に取りまとめることが、プラス評価につながることを、覚えておいてください。また、「最終的には、グループディスカッション参加者の様々な意見を適切に整理したうえで、20分の制限時間内にグループとしての結論を適切にまとめて、代表者が発表すること」を強く意識してください。合格を目指すならば、グループディスカッション後半に、自分自身も含めた参加者全員の立場および理由づけを適切に整理して、グループとしての結論をまとめることに貢献するような発言をするのもよいでしょう。
積極性 積極的に自らの意見を述べることができているかについては、志願者によって差があり ました。1回しか発言できていなかった志願者がいました。積極的に自らの意見を述べるということは、グループディスカッションにおける最も基本的な立ち居振る舞いであることを、再度確認しておいてください。どうか自信を持って自分の意見を述べて下さい。
その他 次のようなグループがありました。
・20分の時間の振り分けが課題文で提示されていたにも関わらず、時間配分がうまくできていない。
・時間切れを極度に気にして、議論が深まらず、発言を一巡して終わりになっている。
・司会が、グループディスカッションの流れを適切にとりまとめることを、できていない。 司会に立候補すること自体は、評価対象ではありません。選考の際に司会に立候補することは、ハイリスク(グループディスカッションの流れを適切にとりまとめられなかった場合、低評価につながる)=ハイリターン(グループディスカッションの流れを適切にとりまとめられた場合、高評価につながる)であることを、確認してください。
・タイムキーパーが、正確に時間を把握し参加者全員に知らせることをできておらず時間が余ってしまうといったこともありました。合格を目指すならば、ある役職を担った以上その役職に求められる役割をきっちりと果たすことが必要とされます。なお、以上で指摘した課題に対応するために、必要に応じて次のような取り組みを行うことも考慮に入れるとよいでしょう。
・タイムキーパーはもちろんのこと他の志願者も、20分の制限時間内に代表者による発表をすることを意識する。
・司会が、グループディスカッションの流れを適切にとりまとめることができていない場合に、司会以外の志願者が司会を補助するような発言をする。
・タイムキーパーはもちろんのこと他の志願者も、正確に時間を把握したうえで、参加者全員に知らせることに、注意を向ける。

 

まとめ
高大接続入試(法学的思考型)で問われるのは、特別な能力や技能ではなく、これまでに習得してきた基礎的な知識と思考力・主体性です。したがって、確実に合格を目指すためには、何か特別な対策をするのではなく、授業を中心とした普段の活動に精力的に取り組むことを最も大事にしつつ、さらに世の中の様々な出来事に対して幅広い関心を持つことを心掛けてください。