トップページ4専攻 > 国際文化専攻

4専攻

国際文化専攻亀井哲也 教授

研究教育フィールドモノと文化、博物館

モノを通して文化を知り、伝える

アマゾンのある民族では、今でも狩りのために鉄砲ではなく弓矢を使っています。彼らは決して鉄砲を知らないのではなく、好んで弓矢を選んで使っているのです。一体、なぜなのでしょうか?

私たちを取り巻く世界には様々な道具や機械があります。文明の利器、科学の進歩の成果として捉えられがちですが、必ずしもすべての人間がそれを肯定的に受け入れているわけではありません。鉄砲の火力の凄さ、操作性の良さは、ジャングルに暮らすこの民族も知っています。彼らが弓矢を選択する理由は二つあります。ひとつは極めて実利的な理由です。鉄砲では発砲して一匹の獲物を得たとしてもその音に驚いた他の獲物が逃げてしまいますが、無音・静音の弓矢であれば何匹もの獲物を手にすることが可能となります。しかしそれ以上に彼らが弓矢に固執する理由があります。それは弓矢を自在に操れる者を讃えるという彼らの価値観です。鉄砲に比べれば威力の弱い弓矢は、的確に当てなければなりません。優れた技能を会得しなければ扱えない「道具」にこそ価値がある、そう彼らは考え、弓矢を選択しているのです。

鉄砲ではなく弓矢で狩りをする人々を「無知」、「原始」、「未開」と位置づけることは誤りです。自分とは異なる文化を、自分の尺度だけで把握しようとすれば、「誤解」そして「いさかい」につながります。他者の考え方や価値観を知り、彼らの行動を、思考を、そして「モノ」を理解し、許容することこそが、世界の様々な文化・社会と接するこの時代に必要な我々の姿勢です。

一見「変わっている」と思う物事にも、合理的説明があり、自らを顧みて同じような物事があることに気づくかもしれません。他者を見つめ、他者を知り、振り返って自己を見つめ、自己を知る。そのトレーニングを、私のゼミでは「モノ」をキーワードとして実践します。様々な価値観や様々な思考法、様々な方法論の存在を知る中で、物事の捉え方や考え方の幅が広がることでしょう。「モノ」を見つめ、さわり、つかうことで、その「モノ」自体だけではなく、その作り手や使い手の文化や社会を知り、様々な情報をまとめ、論文を書く。こうしたプロセスを重視します。

そして「モノ」と情報の集積する「博物館」もゼミの大きなテーマとなります。「モノ」とその背景を伝えるための「展示」は、一種のマス・コミュニケーション技術です。不特定多数の人たちにモノゴトを伝える技術を、学びを通じて修得します。