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コミュニティ学専攻

地域フィールドワークとは

地域社会-「住むとは?」から考える-

「住む」とはどういうことでしょうか?「住む」とは動詞ですから何らかの行為、行動を表しています。この行為を「住居に住む」ことに限定すると家族生活のイメージが浮かびます。つまり「住む」とは私生活を意味することになります。こういうイメージは大都市で、しかも一人住まいの生活をしている人にはぴったりくるかもしれません。しかし、一般的には伝統的な盆踊り・祭りやその他の文化活動、スポーツ活動、教育活動など地域社会の関係も「住む」行為の中に含まれます。このように捉えると「住む」とは個別の私生活を意味するのではなく、地域生活を意味することになります。

地域生活を「強制な古い地縁関係」と見なす考え方が戦後強くなりましたが、震災や孤独死の問題から古い関係ではなく、今の生活を支える大切な関係であるという見方が広がってきました。「地域の再生」、「新しい公共」といった言葉がそのような認識を示しています。したがって地域社会の共同関係、あるいは個々人の協力関係をどのように組み立てていくかは住民自身の課題であると同時に政策課題でもあるのです。この課題を明らかにするために、豊田市足助地域自治区(平成の大合併前の足助町)の住民の様々な活動を調査しています。

実に様々な活動があります。EM菌を散布して川の浄化に取り組む、地域の史跡を発掘・整備してハイキングコースを造る、地蜂の巣を育ててその大きさを競う、山野草の会、古老に生きる知恵を聞いて活字化する、などなどの活動です。こうした個々の住民活動は地域の自治会(集落や町内の全戸参加による住民組織)と協力をしながら生活の豊かさを創り、地域社会の継続性を維持する活動と言えます。足助は山間地域の集落が多くあり、過疎化の問題も抱えながらも、自然の豊かさと伝統文化を媒介にした地域の関係を育み、自分たちの時間と場所を創造する試みをしています。それが都市に生きる人々を引き付ける魅力になってくれば、自分たちの地域に、したがって自分の生活に自信をもつことができます。そのプロセスは簡単ではありませんが、考えてみれば、近代からの工業化と都市化は環境問題でも、精神的な豊かさでも行き詰まっているわけですから、それを超えるチャレンジとも言えるように思います。ですから私たちが活動をしている人たちに話を聞くと、実に様々な活動の意味を語ってくれます。一言でいえば「生き方」「生き様」とも言えますが、地域社会の関係と自分の生活をどのように結び付け、そこにどのような新しい質の豊かさを創るか、ということであると思います。しかし、おおげさではなく、長い先を見据えて今を楽しんでいるように見えます。