中京大学 教養講座

現実課題への挑戦を通して「仕事力」を磨く。

 愛知県から遥か1,800km。日本最西端に位置する与那国島の人口は1,700人余り。島内に働き口は少なく、高齢化が進行する。その一方、美しい風景や特産品があり、独自の伝統が息づいている。そんな与那国島の人口減少を食い止め、活性化させるために何をすべきか…総合政策学部の「社会人基礎力講座」を受講する3年生に与えられたテーマです。学生たちの挑戦は、華やかな観光地が抱える“リアル”な課題を知ることから始まります。「若者流出」や「雇用創出」といった、昨今の日本では耳慣れた言葉の先をたどり、地元の人たちの想いに触れていく中で、遠く離れた与那国島の課題解決は、自ら挑むべきミッションになっていきます。講座終了時には、与那国島の自治体や産業界の代表者を前にプレゼンテーションを実施。ここで最優秀賞に選ばれたチームは、社会人基礎力協議会と経済産業省が共催する 「社会人基礎力育成グランプリ」への出場が決まっています。
 2007年にスタートしたこの講座は毎年、民間企業や自治体の協力を得て、学生に現実課題に立ち向かう機会を提供してきました。この挑戦を通して学生たちは、現実を把握し問題の本質を見抜くこと、議論を通して考えを深めていくこと、具体的な提案につなぐことの難しさに直面します。その一つ一つが、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として経済産業省が提唱する「社会人基礎力」を育てます。

社会人基礎力

「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として経済産業省が提唱しているもので、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成されている。

社会人基礎力講座2016

公共編

優秀賞:第1班(メンバー:森本・高野・西澤)

《提案概要》

公共編第1班の3人は、地域が「高等教育機関」をもつことの意義の大きさを指摘し、新たな「高等学校」の設置を提案。彼らが提案のポイントとして挙げたのは、

  • ① 他の離島も巻き込み、財政的に維持が可能な規模を確保する
  • ② 直前の法改正で可能となった「ICTを活用した遠隔教育」を取り入れ、教育の質を担保する
  • ③ 台湾花蓮市との交換留学を実施して交流を深めつつ、中国語を授業に取り入れた与那国島ならではのカリキュラムを導入する

ことの3点であった。
他の公共編チームの多くが、新たな観光資源開発や交通機関、あるいは医療施設の充実など、直接的に産業活性化や地域サービスの充実を図る提案であったのに対し、第1班の提案は、産業活性化の基盤となる「人材育成」という視点からアプローチした点が評価され、優秀賞を獲得。また、これまで弱点と考えられてきた「離島」であるという現実を、新たな発想やテクノロジーで強みに変えられる可能性を示した点も高く評価された。

公共編優勝者インタビュー

多分野の取材・調査を積み上げ、住民の気持ちに寄り添う提案へ。

Q1:今回の提案で最も重視したものは?

 与那国島では中学を卒業すると、ほとんどの人が島外の寮がある高校へ進学します。私たちは、それが人口流出の根っこにあると考え、高等学校の設置を提案の柱に据えました。しかし高校の新設は、かつて町長さんが提案され、住民アンケートも実施されていました。結果は、「たとえお金が掛かっても、子どもたちに質の高い教育を受けさせてやりたい」という意見がほとんど。当然ですが、私たちが考える以上に、島の人たちは子どもたちの未来を気遣っていました。そこで私たちは「教育の質の維持」と「将来に役立つ教育」の2つを目的に加え、高校新設の可能性を探りました。プレゼンでは、島がもつ国際性に最先端の情報技術を組み合わせれば、人口減少の要因となっている高等教育機関の欠如の問題を解決できることを示しました。

Q2:いちばん苦労したこと、その経験から得たものは?

 一度否定されている高校新設を再検討するため、遠隔教育の事例収集や花蓮市との交流の実態調査、再度の島民意識の調査、法的な裏付け調査など、広範囲な調査や取材が必要となりました。これらを限られた時間のなかで行うことが一番苦労した点です。ただ、こうした作業を繰り返すなかで、うまくチームで仕事を分け合うコツをつかめたと思います。もう一つ、私たちが実感したのは、島に住む人たちの「本当の気持ち」を探り当てることの重要性です。どんな公共物であっても、それを受け入れ、育てていく住民の気持ちに寄り添っていなければ、つくる意味はありません。こうしたことから、住民意識の把握に時間と手間をかけ、提案のベースにしました。

Q3:今回の経験をこれから、どのように活かしていく?

 現在、私たちはインター・ゼミ(他大学との共同ゼミ)の「子どもの貧困」について研究しています。特に、貧困家庭の子どもたちが他の家庭の子どもたちと同等の教育を受けられるようにするための方策について議論しています。こうした課題解決においても、現状の把握と分析、論理的な思考、さらに議論を通して思考を深めていくことなど、基本的なやり方は同じだと思います。今回、課題解決にいたる一連の流れを経験できたことで、どんな力が必要なのか明確になりました。そして何より、自分から動き出さないと、何も前に進まないことも身をもって体験しました。今後は、ゼミや就職活動のなかで、こうした課題解決力に磨きをかけていきたい。それが卒業後も、社会人として仕事をするうえで役立つ力となると確信しています。

社会人基礎力講座2016

ビジネス編

優秀賞:チームYTT(メンバー:吉田・竹内・谷頭)

《提案概要》

地域産業活性化の起爆剤となる商品として、YTTチームは、島の特産品である「イソギク」を使った新商品「健康入浴剤」の開発・製造・販売までをトータルに提案。今回のプレゼンテーションでは、他の公共編チームの提案も同様に、島の特産品を核とした新商品開発を提案した。その中でYTTチームの提案は、

  • ① 原料の生産から加工、流通、販売まで一貫して島内で行う6次産業化によって雇用の確保に貢献する
  • ② 与那国の海の風景をモチーフとしたパッケージを開発し、観光のメッセンジャーとしての機能をもたせる
  • ③ 地元のホテル・旅館をプロモーションの場として活用し、地域の観光事業と一体的に事業を展開する

など、「地元の雇用」や「地域の観光産業」への波及効果についても検討されていることなどが評価された。また、イソギクの生産量における現時点での限界を認識し、今後の増産スケジュールにあわせた生産・販売計画を立案するなど、実現可能性の点においても高い評価を得た。

ビジネス編優勝者インタビュー

生産者と消費者の間で、新商品が紡ぐ「ストーリー」を提案。

Q1:「イソギクを使った入浴剤」が生まれた経緯は?

 当初から、島の特産品である「イソギク」を使おうと決めていました。しかし、それをどう商品化するかで二転三転。中間発表では、中途半端な商品提案で、最低の評価をもらってしまいました。私たちが何をそんなに悩んだかというと、新たな商品がもつべき「ストーリー性」です。与那国島にとってなぜその商品でなければいけないのか、そして地域の未来にどう貢献していくのか…。つまり、新商品が紡ぐ物語が与那国島の人々の共感を得ることはもちろん、それが消費者に受け入れられていく道筋を描くことを重視しました。そこで私たちは、商品を通して消費者が与那国島というものを深く意識できる商品の開発を目指しました。それが、イソギクの香りを生かした入浴剤でした。

Q2:提案でこだわったこと、そこから得たものは?

 中間発表から一転、高い評価をいただいたのも、この「ストーリー性」であったと思います。与那国島の良さを感じてもらえる商品づくりと作り手の想いを伝えるパッケージデザイン、島の観光活性化にも役立つプロモーション方法など、単なる商品開発の提案というよりも、商品を主人公にした物語づくりに力を尽くしたつもりです。そのために、試作品を何度も改良し、その度にいろいろな人たちに意見を聞いて回りました。さまざまな話から発想が広がり、商品を核としたストーリーを描くことができました。とにかく、コミュニケーションをとること、そして自分たちから動き出すことで、商品も自分たちも成長することができたように思います。

Q3:今回の経験をこれから、どのように活かしていく?

 総合政策学部は「ビジネス戦略」と「公共政策」の両方を学びますが、どちらに軸足を置くかは学生に任されています。そのため私たちのチームは、ビジネスがテーマのゼミに所属する民間企業志望の谷頭、公共政策のゼミに所属する公務員志望の吉田、さらに、海外の貧困問題やその解決を目指すソーシャルビジネスに興味をもつ竹内と、それぞれ興味も研究内容もバラバラな3人が集まりました。目指す将来像は異なりますが、それが公共分野であっても、ビジネス分野であっても、きっとその仕事は課題解決の繰り返しであることに変わりはないと思います。この講座を通して学んできたのも、課題解決に求められる基本的な力。まずは、3人がそれぞれの研究活動に活かすと共に、目前に迫るそれぞれの就職という課題解決にも活かしていきたいと思っています。

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