中京大学 教養講座

カナダらしさとは何か?

 文学や映画でカナダらしさを表現するキーワードは「自然」です。実際、日常生活の中でも自然に関する話題がよく出ます。カナダは大きな国ですが、国土のほとんどは人が生きるには過酷で、人口の多くはアメリカ国境沿いの南部に集中しています。それほど、カナダの自然は厳しい。例えば、イギリスの文学の中で自然は、美しいもの、心を和ませるものとして描かれたりします。しかし、カナダ文学では自然は恐怖や畏怖の対象として描かれることが多く、そこがとてもカナダ的であると思います。
 そんなカナダの文学というと、モンゴメリーの『赤毛のアン(原題:Anne of Green Gables)』が有名ですが、実際にカナダ文学が世界から認められ始めたのは20世紀後半からのこと。現代のカナダ文学を代表する作家でブッカー賞も受賞しているマーガレット・アトウッドは、その著作『サバイバル』の中で、カナダ文学の特徴を「生き残りの文学」だと語っています。厳しい自然、イギリスの伝統、そして新たな潮流を作り出そうとするアメリカなるものから、いかに生き残るか、どうやって自分たちのアイデンティティを守り育てていけるかがつねに物語の底流にあります。

サバイバルをかけた多文化主義。

 カナダのもう1つのサバイバルには、ケベック州などフランス語圏に住む人々が、いかに英語を話す人たちに囲まれながら、自分たちの言語や文化を守るかという格闘があります。
 第二次世界大戦後、多くのフランス系カナダ人がヨーロッパ大陸から渡ってきました。その時カナダは、英語を話す国民とフランス語を話す国民を同等に扱い、1969年に2つの言語を公用語としました。1971年にはさらに少数派の人々に配慮し、多文化主義を宣言。
 以後、多くの移民を受け入れてきましたが、この多文化主義が異なる文化をもつ多様な人たちを結びつけてきました。そして、互いを認め合い、尊重し合う社会のあり方がカナダの魅力となりました。

異文化に触れることがあなたを強くする。

 一見すると多様性とは対極にあるのが日本だと思われるかもしれません。日本は島国として独立した地理のなかで、独自の文化を育んできました。同時に、古くから海外の文化を積極的に受容しながら「日本化する」という面白い特徴があります。そこには驚くほど多様な価値観をもつ日本人がいます。また、さまざまな起源をもつ文化の多様さが世界を惹きつけてもいます。日本もカナダも、やり方は違いますが、いずれの社会も多様性を求めていることに違いありません。それが、2つの国の社会を強く豊かにしています。
 カナダはよく、「Post National(次なる国)」と呼ばれます。それはつまり、民族で結びつく「国」でなく、「文化」で結び合う社会を指しています。カナダは次の時代の生き残りを、多民族・多文化を大切にし、その調和のなかに見出していこうとしています。そして、この考え方は世界に広がりつつあります。
 したがって皆さんには、自国の文化を学ぶ一方で、異なる文化にも積極的に触れてほしいと思います。自分とは異なる考え方を学ぶことは、自分はいったい何者なのか、自分はどう生きるべきかを考える機会となります。それが、新たな時代を生きるあなたを強くしてくれるでしょう。

Profile

中京大学国際英語学部 教授 クリストファー・アームストロング

1992年カナダ・モントリオール州コンコーディア大学大学院にてM.A.(文学修士)取得。1998年にモントリオール大学でカナダ文化における地域性をテーマに博士号取得。同大学講師などを経て2001年に来日。2002年より中京大学勤務。2008年より国際英語学部教授に就任し、現在に至る。研究テーマはカナダ文学の地域性、北米の文学および映画におけるツーリズムとロード・ナラティヴなど。また、学習指導におけるコンピュータの利用についても研究する。

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