中京大学 教養講座

全国平均を上回る愛知県の出生率。

 出生率が過去最低となった1.57ショックからすでに27年が経過しています。以後、さまざまな少子化対策としての政策が実施されてきましたが、昨年の出生率は1.46と未だ回復に至っていません。そんな中、目立たないながら頑張っている県があります。我らが愛知県です。人口750万人以上という大きな人口を抱えながら、三大都市圏の中では唯一、全国平均を上回る1.49を記録しています(東京都は1.17、大阪府は1.34)。あまり話題にされていませんが、都市化が少子化の引き金とされる中での愛知県の頑張りは、少子化問題に頭を悩ませる日本にとって一条の希望の光と言えるのではないでしょうか。
 愛知の出生率が高い要因の一つは、その産業構造にあります。サービス業の比率が高い東京や大阪と比べ、愛知は製造業の比率が高いことが出産や子育てに適した良質な雇用の場になっています。サービス業は相対的に非正規雇用が多く、経済的、時間的に結婚や出産しづらいと言えます。また、愛知県内でも、工場が立地する地域ほど出生率が高い傾向にあります。

バリバリのキャリアを求める人ばかりじゃない。

 強い産業構造以外にも、所得に対し住宅費が安いことや、比較的身近に住む親族からの充実した子育て支援など、愛知県には出産や子育てを後押しする環境があります。また、こうした地域特性以外にも、県内の自治体における多様かつ堅実な少子化対策が実施されています。
 例えば横浜市の「待機児童ゼロ宣言」や石川県の「プレミアムパスポート」などのような目立つ施策はないかもしれませんが、着実に多面的な支援を行っています。どれか一つだけをとると物足りなくても、幅広く展開していることが重要です。なぜなら、結婚、出産、子育てに対する考え方は多様であり、1本の注射で全員が良くなるような特効薬はないからです。
 愛知県庁の調査によると、20~40代の女性の80~85%が一度離職した経験があると答えています。また、子どもが3歳になるまでは子育てに専念したいという人の割合も多いです。これに対して、国はこれまで、継続就業しながら子育てする人の支援に集中していました。もちろん、それはとても大切なことですが、それぞれの価値観やライフステージの環境変化に応じた働き方を用意できるかが少子化問題解決の鍵であり、安定した雇用基盤をもつ愛知だからこそ先駆けて取り組むべきテーマではないでしょうか。

社会学があなたの未来を照らす。

 中京大学現代社会学部では、こうした少子化問題や高齢化問題、さらにコミュニティや労働、福祉、教育問題など、現代社会が抱える諸問題について研究しています。いずれのテーマも「人間」に関わることです。現代社会学は、現実を生きる人たちに密着しながら、人間がつくる社会全体の変化を俯瞰していきます。そして、その成果は、国や自治体の政策づくりや世論の形成など、社会の選択に適切な材料を提供しています。
 それは同時に、いつかあなたが社会人の一員となり、一人の人間として生きていく時にも、どんな選択をすべきか指し示してくれるでしょう。

Profile

中京大学現代社会学部 教授 松田 茂樹

慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。2006年博士(社会学)。第一生命経済研究所主席研究員を経て2013年に中京大学現代社会学部教授に就任。現在に至る。専門は少子化対策、子育て支援、家族論。これまでに内閣府「少子化危機突破タスクフォース」構成員や厚生労働省「社会保障審議会児童部会」委員などを務める。主な著書に『少子化論(勁草書房)』など。

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