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4専攻

コミュニティ学専攻辻井正次 教授

研究教育フィールド心のケアとサポート

社会という広いフィールドで心と向き合う。

広汎性発達障害(自閉症)の子どもたちは、場面や状況を自然に読み取る能力が弱いだけで、一つひとつ教えられれば何でもできます。近眼の人がメガネを必要とするように、彼らをサポートする環境が必要です。現在私は、彼らを社会的に支援するシステムづくりについて、医療や心理学の専門家と子どもたちの家族で作るNPOを中心に、多くのボランティアとともに進めています。

自閉症というのはいわば個性であり、障害を取り出してきて根本的に直そうということではありません。彼らが社会に適応できるよう、社会のしくみの方を少しだけ変えていこうということ。ですからNPOでは、彼らを直接ケアし自立を支援しながら、一方でボランティアスクールを開講し、2年間かけてサポートスタッフの指導者となる人材育成にも取り組んでいます。ボランティアはこの地域の大学生たちが中心で、現在150~160名ほどの学生が参加してくれています。

残念なことに社会にはまだ無知からくる偏見が存在します。例えば、児童虐待が社会で問題化していますが、被虐待児童の半数は自閉症を含む発達障害の子どもたちです。子育てが難しく、結果的に虐待につながっているケースがかなりあります。親ばかり責めても解決しません。最近ではやっと、そうしたことが分りはじめ、発達障害の児童や家族を支援する法整備も始まっています。同時に脳画像研究などの生物学的精神医学研究が進歩し、科学的な解明も進んできました。さらに、支援に向けて企業や自治体などの協力が得られるようにもなってきました。

心の問題はとても個人的なものです。しかし、それは社会との関わりの中で生まれるもの。であるなら、支援を必要とする人に手を差し伸べる社会のあり方を考えていくことが必要なのではないでしょうか。このゼミでは、そうした大きな視野から「心」を見つめていきたいと思っています。

写真解説・・・辻井先生は、発達障害の子どもたちを支援するNPO法人アスペ・エルデの会※の理事長を勤める傍ら、NPO法人日本ドルフィンセラピー協会※の理事長も勤め、イルカ介在療法の研究なども続けている。辻井ゼミでは、広く心に関わる分野を対象に、家族や企業、地域など、社会との関係性の中で揺れ動く心のしくみや課題を追究する。

※NPO法人アスペ・エルデの会⇒http://www.as-japan.jp
※NPO法人日本ドルフィンセラピー協会⇒http://www.jdat.jp